Wi-Fiルーターを最新モデルに買い替えたのに、速度が改善しない。あるいは、高い製品を選んだはずなのに、特定の部屋で電波が途切れる。
こうした不満の多くは、ルーターの性能そのものよりも、使う端末の規格が古かったり、住宅の壁や間取りの影響を受けていたりすることで起こります。
パッケージに書かれた最大速度の数値だけを見て選ぶと、実際の利用環境では性能を十分に発揮できないことが少なくありません。
そこで本記事では、通信会社に15年以上勤める筆者が、今の環境に適した一台を選ぶための判断基準を整理しました。
Wi-Fiルーターの購入を考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
- Wi-Fiルーターを最新機に買い替えたのに速度が変わらない方
- 特定の部屋で電波が弱く、中継機の導入や買い替えを検討している方
- カタログの最大速度ではなく、自分の環境に合うモデルを正しく選びたい方
Wi-Fiルーターの「正しい選び方」は、使う端末の規格で決まる
Wi-Fiの通信速度は、ルーター(送信側)とスマホやパソコン(受信側)の双方が対応している共通の規格によって決まります。
まずは、この性能の「組み合わせ」で起こる問題を整理します。
最新規格のルーターを買っても「意味がない」ケース
Wi-Fiの速度は、ルーター(送信側)と端末(受信側)の双方が、同じ規格を利用して初めてスペックを引き出せます。
たとえルーターを最新のWi-Fi 6や7に買い替えても、使っているスマホやパソコンが古い「Wi-Fi 5(11ac)」までしか対応していなければ、通信速度はWi-Fi 5のまま変わりません。
せっかく高性能なルーターを導入しても、古いスマホやパソコンのスペックに引きずられてしまうからです。
| 手元の端末の規格 | Wi-Fi 5ルーターへ更新 | Wi-Fi 6ルーターへ更新 |
| Wi-Fi 4 (11n) | × 体感差なし | × 体感差なし |
|---|---|---|
| Wi-Fi 5 (11ac) | ◎ 性能をフルに発揮 | × 体感差なし |
| Wi-Fi 6 (11ax) | × 性能を活かせない | ◎ 性能をフルに発揮 |
まずは、自分のスマホやパソコンがどの規格に対応しているかを把握してください。それが分からないままWi-Fiルーターを選んでも、期待通りの速度は得られません。
最新モデルへの買い替えで発生する「スペックダウン」の罠
「最新のWi-Fi 7対応」という言葉だけで選ぶと、家族で同時に使ったときの通信品質が落ちてしまうことがあります。
最近の低価格なWi-Fi 7(またはWi-Fi 6)モデルは、最新規格に対応させる一方で、コストを抑えるためにアンテナの本数(ストリーム数)を削っているものが多いからです。
アンテナの本数は、データの通り道である「車線の数」だと考えてください。
たとえWi-Fi 7になって1本あたりの最大速度(時速)が上がったとしても、本数が4本から2本に減ってしまえば、複数の端末で同時に通信した際の処理能力は物理的に下がります。
ルーターを選ぶときは、規格の世代(Wi-Fi 7など)だけではなく、今使っているルーターと比べて「アンテナの本数」が減っていないかを確認してください。
失敗しないための「ルーター選び 3つの鉄則」
ネットの製品ページには多くの数字・スペックが並んでいますが、実際に使って差が出るポイントは実は3つしかありません。
この3つさえ押さえておけば、自分にぴったりの一台が迷わず選べます。
同時通信の安定感を左右する「ストリーム(アンテナ)数」
「ストリーム数」とは、ルーターが同時に信号を処理できる系統数です。先ほどの「車線の数」の例でいえば、車線が多いほど、家族全員が同時に通信しても渋滞が起きにくくなります。
一般的な家庭環境では、以下の目安が参考になります。
| 家庭の状況 | 同時利用のイメージ | 推奨ストリーム数 |
| 1〜2人暮らし | スマホ数台で動画を見る程度 | 2×2 でも可 |
|---|---|---|
| 3〜4人家族 | 各自がスマホ・PCを常用 | 3×3 〜 4×4 を推奨 |
| 仕事・趣味重視 | テレワークやスマート家電が多い | 4×4以上 が安心 |
なお、通信速度はルーターだけでなく、スマホなどの端末側の性能(上限)にも左右されます。端末が「2×2」までしか対応していなければ、ルーターが「4×4」でもその端末一台との速度は「2×2」分までしか出ません。
しかし、ルーター側の車線(ストリーム数)に余裕があれば、複数の端末へ効率よく通信を振り分けられるため、家全体のネットが詰まりにくくなり、結果として安定感が増します。
住宅構造(戸建て・マンション)による電波の届きやすさ
どれだけ高スペックなルーターでも、壁の素材が電波を遮ってしまえば、その性能を十分に発揮できません。鉄筋コンクリートのマンションや、断熱材にアルミシートを使った戸建ては電波が弱まりやすく、ルーター1台で家全体をカバーするのが難しいケースもあります。
フロアをまたぐ3階建てや、廊下を挟んで部屋が離れている間取りでは、高額なルーター1台を買うよりも「メッシュWi-Fi」や「Wi-Fi中継器」の組み合わせを検討する方が、結果的に安くて快適になることも多いです。
- 木造・石膏ボード: ◎ 通りやすい
- レンガ・厚いコンクリート: △ かなり弱まる
- 鉄筋コンクリート(RC): ✕ 大幅に遮断されることもある
- アルミ断熱材(内壁): ✕ 意外な盲点。 電波を鏡のように反射してしまう
家のどこにいてもWi-Fiを快適にする「置き場所のコツ」と「中継機の選び方」については、以下の記事にまとめました。

混雑回避の必須条件「IPv6(IPoE)」対応の有無
夜20時〜23時ごろにネットが遅くなる原因は、プロバイダの「接続ポイント」での渋滞です。
従来型の接続方式(PPPoE)は、ネットに繋ぐ際に必ず「混み合うポイント」を通らなければなりませんでした。利用者が集中する夜間に、ここで順番待ちが発生して速度が落ちるのです。
しかし、この混雑箇所をショートカットして、直接インターネットへ抜けられる「IPv6(IPoE)方式」が現在の主流となります。
Wi-Fiルーターを選ぶときには、速度規格(Wi-Fi 7など)以上に、この「IPv6(IPoE)」に対応しているかどうかが、夜間帯の快適さを大きく左右します。
- ルーターの仕様: 製品ページに「IPv6(IPoE)対応」の記載があるか
- プロバイダの契約: 利用中のプロバイダがIPv6サービスを提供しているか
→ プロバイダによってはオプション申し込みが必要な場合があります
「IPv4」と「IPv6」の技術的な違いや、夜に強くなる「IPoE方式」の具体的な仕組みについては、以下の関連記事に詳しくまとめています。

プロが厳選する「迷ったときのおすすめモデル」とは
スペックの見方がわかっても「結局どれを選べばいいの?」と感じる方に向けて、用途別に選ぶべきモデルを2つご紹介します。
一人暮らしなら「コンパクトな2ストリーム機」
一人でスマホとPCを数台使う程度なら、安価でコンパクトな「2×2(2ストリーム)」のモデルで十分です。
ストリーム数は最小限ですが、一人で使う分には十分な速度が出ます。価格も10,000円前後と非常に手頃なので、初めての一人暮らしでも安心して導入できます。
| 型番 | Aterm 3000D4AX |
| メーカー | NEC |
| 規格 | Wi-Fi 6(11ax) |
| 最大速度 | 5GHz帯:2402Mbps 2.4GHz帯:574Mbps |
| ストリーム数 | 5GHz帯:2×2 2.4GHz帯:2×2 |
| IPv6(IPoE) | 対応機種 |
家族で使うなら「安定の4ストリーム機」
3〜4人家族で、それぞれが動画視聴やゲームを同時に楽しみたいなら、迷わず「4×4(4ストリーム)」モデルを選んでください。
複数の端末が同時に通信しても速度が落ちにくく、家全体の安定感が格段に変わります。こちらは15,000円~20,000万円が相場で、性能と価格のバランスが最も優れています。
| 型番 | WSR-5400AX6P-BK |
| メーカー | バッファロー |
| 規格 | Wi-Fi 6(11ax) |
| 最大速度 | 5GHz帯:4804Mbps 2.4GHz帯:573Mbps |
| ストリーム数 | 5GHz帯:4×4 2.4GHz帯:2×2 |
| IPv6(IPoE) | 対応機種 |
10ギガ環境を検討中の方は、ポートの規格など選ぶ基準が根本から異なります。こちらの記事で詳しく解説しています。

Wi-Fiルーターの選び方でよくある質問(FAQ)
Wi-Fiルーター選びで気になりやすい疑問を3つピックアップして、できるだけわかりやすくお答えします。
古いルーターを使い続けるとセキュリティ上のリスクはある?
メーカーのサポート終了により、脆弱性が放置されるリスクがあります。
発売から5年以上経過した機種は、新しいウイルスに対する「修正プログラム」の配布が止まるケースが多いです。安全な通信環境を維持するためには、5年を目安に買い替えを推奨します。
5GHzと2.4GHz、どちらに繋ぐのが正解?
基本は「5GHz」を使い、電波が届きにくい場所では「2.4GHz」に切り替えてください。
5GHzは高速で電波干渉に強いですが、壁などの障害物に弱い特性があります。2.4GHzは速度は落ちますが、遠くまで電波が届きやすい性質を持っています。利用場所に合わせて使い分けるのが効率的です。
家中へ効率よく電波を届けるための設置場所は?
家の「中心付近」かつ「床から1m以上の高さ」への設置が有効です。
電波はルーターを中心に全方位へ飛びますが、床や壁に接触すると減衰します。部屋の隅や床に直置きせず、なるべく見通しの良い高所に置くことで、上下階や隣の部屋への電波強度が安定します。
Wi-Fiの周波数の違いや特徴については、以下の関連記事で詳しくまとめています。

まとめ|「最新規格」より「性能の組み合わせ」で選ぶのが正解
Wi-Fiルーター選びで重要なのは、「新しければ良い」という基準だけで選ばないことです。
ルーターは通信の通り道であり、接続する機器(スマホやPC)側の性能との組み合わせで実際の速度が決まります。
選ぶ際に確認すべきポイントは以下の3点です。
- 接続する機器が対応している通信規格
- ストリーム数(アンテナの数)
- IPv6 IPoE通信への対応有無
これらを自分の利用環境に合わせて整理すれば、あなたにぴったりの1台を迷わず選べるようになります。
Wi-Fiルーターを設置した後は、接続先の「周波数帯」にも注目してください。2.4GHzと5GHzのどちらを使うかによって、通信の安定感は大きく変わります。
HIROWi-Fiルーターのスペックをしっかり引き出すためにも、状況に合わせた使い分けが大切です。




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